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メリハリのないオフィスでは生産性が低下する
日本では、「オフィス=白色」という常識がなかば定着しています。日本人らしい清潔感が感じられるものなので、なんとなく「当たり前」と思っていないでしょうか。
人間は、環境から影響を受けて生きています。色には、それぞれに異なる心理的効果があります。確かに、「白色」は清潔さを感じさせ、気分を新たにさせてくれます。
ですが、ある研究の結果では、白で統一された部屋では、従業員のミスが発生しやすいことが分かっています。たとえば、演出効果として壁やイスなどを白で統一した舞台作品を想像してみてください。長く見ていると、目がチカチカして落ち着かなくなりませんか? とくに中高年にはきついですよね。
白で統一されたオフィスは、清潔感の半面、長時間滞在すると、従業員にストレスをためてしまうものなのです。オフィスの部屋という部屋、すべてがこれでは逆に生産性が低下し、働き方改革に逆行してしまいます。
実は、白色に限らず、オフィス環境では単一の色を採用することは望ましくありません。よく「白」をイメージされがちな病院でも、よく見ると、淡い青色やアイボリーなどのカラーが使われていたりします。「清潔=病院=白」というのは、一種の偏見です。
オフィスのカラーにはどのような色が適しているのでしょうか。
オフィスに色彩効果を取り入れる
オフィスのカラーコーディネイトを考えるには、オフィス内でのそれぞれの空間の持っている「目的」を考え、それに対して効果のあるカラーを選ぶことが重要になります。
- 業務を行う部屋、作業室
オフィス空間に「赤色」を取り入れると、作業のモチベーションが上がることが分かっています。一方、デザイナーなどクリエイティブな業務の場合は、集中力を高める「青色」を少し取り入れると効果があるとされています。一方、長時間のデスクワークを行う部署では、気分を落ち着かせる「緑色」を加えるのがよいでしょう。 - 会議室
会議室には、在室者の心理状態に落ち着きを与えてくれる、「ブラウン」や「グレー」が適しています。落ち着きを感じられると、冷静に議論でき、合意に達することに効果があるでしょう。部分的に「赤色」を取り入れると、アイデアが出やすく、会議が活性化するともいわれています。 - 応接室
応接室も、安定と協調性を印象づけてれる「ブラウン」が最適です。ただ、「黒」に近い色の壁や床などに囲まれるデザインだと、部屋を狭く感じてしまい、お客様に圧迫感を与えてしまいますので注意しましょう。 - 休憩室・喫茶室
休憩室は、落ち着きのある「ブラウン」や「緑色」、もしくは、緊張を和らげて仲間意識を高めてくれる「オレンジ」がよいでしょう。ただし、オレンジはアクセント色として採用することがベターです。 - 会社の入口
入口は、会社のシンボルマークに準じた色を採用するのがよいでしょう。お客様に対して、その企業に足を踏み入れる実感を抱かせることができます。従業員にも、始業前に「よし、やるぞ」という気分にさせられます。
なお、「黄色」は左脳を刺激して元気な印象を与えてくれるため、入口やイスのアクセント、キャラクターグッズなどで使うのには適しています。一方、刺激が強く、人に不安感を引き起こす場合がありますので、会議室などでは大きく(壁一面などのように)使用しないことをおすすめします。
オフィス家具や床・壁の内装を使用目的で変える
上記のようなカラーに加え、オフィス家具などで工夫を加えると、さらに効果がアップします。たとえば、以下のような例です。
・応接室に「黒」のイスなどを配置すると、大切なお客様に高級感を与えることができます。実際に、この例が多いことはご承知の通りです。「ブラウン」の代わりに、木目調の柄を使うこともあり得ます。
・作業空間のイスに「赤」でアクセントを加えると、従業員のやる気の向上につながります。また、夏場にエアコンで冷えすぎることを防ぐため、「赤」や「オレンジ」のアクセントを加えたローパーティションを活用して、体感温度が下がりすぎないように工夫することもよいでしょう。適度に観葉植物を配置すれば、気分をリフレッシュすることにも貢献します。
・営業社員が出入りする空間は、社員の気分転換を促すため、観葉植物を置くと効果が期待できます。ただ、こればかりでは「落ち着かせ」すぎてしまう可能性があるため、アクセントでイスなどに「赤」を加えます。
全体に、床や天井などの「ベースカラー」に約70%、カーテンやソファなどの「メインカラー」に約25%、置物など変更可能な「アクセントカラー」に約5%という割合で、配色を考えるとよいとされています。
落ち着きを重視したい空間では、この3つを同系統の色でまとめます。少し反対色を加えると、刺激になりますし、雰囲気もポップで楽しくなります。休憩室などを開放感のある雰囲気にしたいときは、メインカラーを淡い色づかいにします。
また、会社全体に一定の統一感を持たせることも必要です。空間ごとの機能の違いに気を遣うあまり、色遣いがバラバラだと、違和感しか感じなくなります。「デスクと会議室でイスの背もたれの色は異なるが、色合いは統一している」といった工夫が必要です。色合いが揃っていると、デザインやアクセントカラーが違っていても、統一感を感じるものなのです。
照明にも工夫を
さらに、照明の色に工夫を加えることも検討してみるべきでしょう。色温度(K=ケルビン)が目安になります。一般的に、Kの高い照明はワット数以上に明るく感じます。
光の色は、温度が上がるにつれ「赤→黄→白→青白」へと変化します。人間の感覚では、赤い炎は熱く、青い炎は冷たく感じますが、そのイメージとは真逆になります。光は、赤みを帯びているほど色温度は低いのです。Kの数値が低いほど赤みを帯び、逆に、高いほど青みを帯びた白色になります。
Kの高い「昼光色」(5700〜7100K)の青白い色は、明るく冷静にさせてくれますが、長時間だと逆にストレスになりかねません。対して、「白色」(3800〜4500K)程度だと、集中力を高める効果があります。最近のオフィスでは、この色温度を採用する例が増えています。
一方、会社の入口部分は太陽光に近い「昼白色」(4600〜5500K)が自然な印象を与えてくれ、外部からのお客様を違和感なく迎えられます。
米Googleに学ぶ
以上のように、オフィスの(家具を含めた)カラーリングは、従業員の気分、ひいては企業としての生産性、業績にも関係する問題といえます。舞台であれば、「お客を落ち着かせない」という演出は「あり」でしょうが、会社においてそればかりでは、従業員はたまったものではありません。
仕事の内容やスペースの目的に合わせたカラーリングを工夫することが、「働き方改革時代のオフィス」には必要なことなのです。
たとえば、米Googleのオフィスは実に色鮮やかです。白の机とイス、ソファの一部に赤や青、会議スペースを囲むアーチ状のオブジェは黄色や青といった具合です。Googleのロゴカラー(白地に青、黄、緑、赤)に準じた色使いでもありますが、こうした刺激的なオフィスの雰囲気が、量子コンピュータなど、世界を驚かせる技術開発につながっているといえるでしょう。
また、コカコーラのオフィスは、白、赤、黒のコーポレートカラーで統一されています。ただし、この割合は同一ではなく、白の割合が高く、赤と黒は同じ割合です。赤と黒が、刺激と落ち着きとなって、都会的な雰囲気を醸し出しているわけです。
カラーコーディネイトの効果がご理解いただけたところで、実際に具体化するための順序です。家具や什器の変更には予算がかかりますので、まずは壁紙の変更から始めてみるという方法が考えられます。イスなどの更新は、移転やリニューアルの際に、思い切って行うのがよいでしょう。事前にデザインを見比べて、みなで検討するのも社内の活性化にとって効果があると思います。
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